米中首脳会談開催される。

 日中間がごたごたしているうちに米中首脳会談が開催された。胡主席国賓待遇ではないが、それに準ずる公式訪問である。国賓待遇と公式訪問の違いは良くわからないが、大統領との会食会が、晩餐会ではなく、昼食会という違いがあるらしい。しかし、胡主席は大統領以上の豪邸に住む世界一の大金持ちのビルゲイツ氏から晩餐会を招待されて、実質的に最重要の客人としてもてなされているようだ。
 首脳会談ではすでに報道されているように、北朝鮮、イランの核問題、人民元改革・米中貿易問題、人権問題等様々なジャンルで意見交換されたようである。この意見交換のやり取りをネット報道で見るだけでもかなり面白い。米中関係の過去は水と油の関係であったのが今や蜜月関係である。競争の激しい外交の舞台で、妥協することなく自国の主張を貫く両国が、互いの利害関係について、双方の主張をしながら、見事におりあっている。
 例えばイランの核問題については両国はイランの核兵器保有を認めないという目標では一致するとしながらも、米国は制裁論議を求め、胡主席は「外交解決」での協力に言及している。台湾問題についても、胡主席は米国内の「中国脅威論」に配慮して中国は「平和的発展の道に強く関与している」と強調したそうだ。その上で、米国の「一つの中国政策」の継続確認を求め、「我々は決して台湾の分離を許さない」と改めて表明。これに対し、ブッシュ大統領は会談後の記者会見で、「我々は台湾の独立を支持しない」と述べているのである。
 会談の前に行われた記念式典の演説ではブッシュ大統領は中国との関係について「国際システムにおける利害共有者として多くの戦略的利益を共有する」と述べている。そして人権や言論・信仰の自由などをめぐる「相違点」について注文をつけた。一方胡主席は米中両国が経済・貿易分野で双方に利益となる「ウイン・ウイン」の関係を築けると発言。その後の記者会見でも会談後、記者団に「民主化なしに近代化はない」と述べ、中国国内の政治体制改革を進める決意を示した。
 この中国の柔軟な姿勢はどうだろう。中国にとって耳の痛い人権問題に触れられてもアメリカとの協力関係を何よりも重視しているのである。それもそのはず、中国経済の好調は米国への輸出によって支えられ、今や外貨準備高も世界第一位だ。その反面、アメリカの国債を中国と日本の両輪で支ている構図になっているのだそうだ。こう見ると、今後の米中関係は益々緊密になっていくのは間違いない。この二つの大国に挟まれた日本の立場はどうなっていくのであろうか?ここは大いに思案しなければならないところである。
 日本は資源のない島国である。軍隊もなく、徴兵もない。平和で安全で世界第2位の繁栄を享受している特異な国である。格差も中国のように農村と都市部が最大10倍も開いてはいない。多くの中国の友人は日本人の持つやさしさや、思いやりが日本の美点として高く評価している。この美点は弱肉強食の国際社会にあって、絶対に無くしてはならないと思う。しかし、日本は急激な国際情勢の変化に適切に対応できていないようだ。永い間一国平和主義で世界に対して閉じこもってきたそのつけがまわってきている。日本は明治維新以来の、精神の開国の時代を迎えているようだ。